B土壌の固さと踏圧


樹木が衰退する原因として最も多いのが、
踏圧による土壌の固結」です。

また、樹勢を回復させる手段として、
最も効果が高いことが多いのは、
土壌の改良」です。


イメージして下さい。

弱った樹木を何ら傷めること無しに、
もし、土がふかふかの畑に植えかえられるとしたら…

それはどんな木でも元気になるだろう
と誰しも思うでしょう。


そうなんです。
樹勢の回復の基本はそこにあります。
また、樹木が弱っているとき、
まずはじめに
土がカチカチになっているか?
を疑うことです。
8割以上はこれが原因でしょう。


では何故、土は固くなるのでしょう。

公園など、人の出入りが激しいところでは、
それが小さな子供たちだとしても、
土は非常に固く踏み固められてしまいます。

余談ですが、土手に桜が植えられているのも、
もともとは、花見に人を集め、土手を
踏み固めさせるため」とのこと。

現代において、この踏圧の原因は
「車類」にあることが多いようです。
樹木の根が張っているところに
駐車スペースが設けてあったり、
神社仏閣では、建て替えの際に使う重機が
一時的に駐車したような場合でも、
その一度のことで、その先何十年でも
その土壌は固結したままです。


それでは、なぜ土が固結すると根に悪いのか?

@土がある一定以上の固さになると、
 そもそも根が伸びられません。

A酸素不足になるため、栄養吸収根(前項参照)が
 深くまでは張れない。


@については、例外があります。
砂利のような大きな隙間のある土壌の場合は、
いくら堅くても根は石と石の隙間を縫って
張ることができます。
そのかわり、砂利では栄養も水も保持できません。


Aについて
栄養吸収根はその名のとおり、栄養を吸収するという、
活発な活動をしている細胞組織です。
植物も含め、我々有酸素運動で生きているものどもにとって
活発な活動をしている」ということは
酸素を大量に消費している」ということにほぼ等しい。
つまり、これら栄養吸収根は
酸素をかなり使う」ということ。

しかし待って下さい。
土の中は、かれら栄養吸収根のほかにも
微生物や小動物が生息して、
どんどんと酸素を使って、二酸化炭素を出しています。
しかもそこは土の中です。
空気がスースー通るわけもありません。
いったい自然界ではどうしているのでしょうか?

答えは、「」です。


スポンジをイメージしてみてください。
スポンジはふかふかの土のイメージです。

乾いたスポンジは空気をたくさん含んでいますよね?
そのスポンジを水に浸します。
スポンジは水びたしになり、空気が出てきます。
スポンジを水から出し、放置しておきます。
すると重力で水が下から染み出してきます。
最後にはまたすっかり乾いてしまいます。
そのスポンジの中には空気がたくさん含まれています。

さて、この空気は最初の空気と同じでしょうか?
違いますよね?
つまりいわば、スポンジは水の力で空気を入れ替えたのです。

自然界の森の土でもこれと同じことが
今日もおきています。

雨が降ると土に沁みこみ、
土中の空気を大気中に押し出します。
晴れると水が地下水に流れでて、
上からフレッシュな空気が入り込みます。

このようにして土もいわば「呼吸」をしているんですね。


ところが、土がカチカチだとどうでしょうか?
そもそも雨がしみ込んでいきません。
つまりいつまでたっても空気の入れ替えが無いのです。
ということは、
栄養吸収根は地表に近いところにしか
生きていけないということになります。

栄養吸収根が少ないということは、
栄養や水分の吸収が少ないということ。
つまり、人間でいえば、
ひどい下痢が続いていて、食べても食べても
 栄養が吸収できない

ということと同じです。
人間ならそれが続けば死ぬこともありますよね?

樹木も同じなのです。


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