X.葉


E葉色


なんか樹木の調子が悪んですが

葉の色が悪かったり、まばらだったりすると
私のところにこんな相談が入ってきます。

あまり樹木に詳しくない人やあまり関心のないひとでも、
葉の色が悪いとすぐわかる。


さて、パッと見た目、葉の色が悪い。
でも、その原因はさまざまです。

主な原因を挙げると

1)病原菌による病気が発生している

2)虫がついている

3)栄養状態が悪い

4)乾燥しすぎている

5)大気汚染などの化学物質の影響

6)冬だから

7)そもそも適地でない

などなど。


1)病原菌による病気が発生している

よく、『樹木が病気なんですが』という相談を受けるのですが、
厳密に言えば病気は『病原菌』のようなものがついている場合です。
ですが、病原菌が元で樹木が枯れるケースはさほど多いとは言えません。

詳細は、G葉の病害を参照ください。


一度に樹木を枯らすことは稀だとしても、
それが毎年毎年、何度も何度も繰り返されれば当然、樹勢は衰えます。
病葉(ビョウヨウ)(病原菌に犯された葉)は落葉してしまうことが多く、
落葉樹ではそのたびに一年に何度も、葉を出します。
当然、何十年も蓄えてきたエネルギーを大量に使ってしまいます。
それが毎年ともなれば枯死にいたります。


2)虫がついている

葉が食われてしまった場合(食葉性害虫)、
食べられたことは誰にでも分かるので、
誰も『病気』だとは言いません。

しかし、葉の汁を吸うタイプの害虫(吸収性(キュウシュウセイ)害虫・吸汁性(キュウジュウセイ)害虫)では、
虫は大抵は葉の裏に取り付いており、
体も小さいものが多く(アブラムシなど)、
すぐには見つけられないことも多い。

彼らに葉が吸われると、葉の色が薄くなり色が悪くなります。
それを『病気』だと思われることがよくあります。

詳細は H葉の虫害をご参照下さい。


3)栄養状態が悪い

いわゆる肥料の成分のような、養分が不足している場合にも葉の色が悪くなります。

他の原因との見分け方は割りと簡単です。

葉をよくよく観察すると、
葉脈のあたりの色が、濃かったり、薄かったりすることがあります。

どの場合にどうなのかというのは、樹種によってもさまざまですし、
その過不足のある物質によっても症状はさまざまですが、

葉脈のあたりの色が、濃かったり、薄かったりしているものは
この養分の過不足が原因であることがまず最初に疑われます。


4)乾燥しすぎている

これはあまり説明が要らないかもしれません。
原因は、必要な水分量が足りていないため。

では、これが原因であるというのはどうやって見分けるのか?

まず、樹木のテッペン付近(梢端部(ショウタンブ))の色が悪かったり、
枯れていたり、葉が極端に小さくなっている場合、
まずこの過乾燥が疑われます。

ただし、過乾燥の原因には
水が足りない、根からの吸収が悪い、日当たり風当たりがきつ過ぎるなど
いろいろありますのでご注意下さい。
いずれにしても必要な水分量を確保できていないということです。


5)大気汚染などの化学物質の影響

最近の日本では、化学物質のせいで樹木が弱るというケースはあまり無いですが、
そういう強烈な有害物質によって葉が落ちたり色が変わったりする場合、
見分け方があります。

この場合は、有害物質が流れてくる方向の側がより弱ります。

ただし、同じような症状を呈する場合でも、『風による乾燥』が原因の場合があり、
大抵はそちらが原因です。

詳細は、1.周辺環境 @)風当たり―葉へのダメージ を参照下さい。


6)冬だから

これは病気ではありません。
常緑樹は越冬の際、葉の中を不凍液のようにして凍結から身を守ります。
そのとき、葉の色が濃くなります。
俗に『冬っ葉フユッパ』などと読んでます。


7)そもそも適地でない

適地でなければ樹勢も悪くなり、
葉の色も悪い状態となります。

例えば、谷間に近い深い土壌が好きなヒノキを
アカマツが生えるような尾根のようなところに植栽しているケース。

ヒノキは比較的高値で売れるのでこのケースをよく見かけるのですが、
樹高も本来の半分にもならず、葉の色も元気が無い。

ヒノキという樹種が必要とする水分が確保出来ないため、
常に乾燥と戦っている。
この場合は、
4)乾燥しすぎている
で述べたことが原因で衰退します。

同じこの環境でも、アカマツならばびっくりするほど元気に丈夫に育ちます。



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