J物理的、化学的な障害


葉は、その他の組織に比べて構造的に脆い組織です。
そのため環境の直接的な影響を
一番受けやすい部分であるとも言えます。


a) 物理的な障害
葉の物理的な障害で一番多いのが、
『風当たり』の害ではないでしょうか。
風当たりが強い場所では葉が枯れやすい
というだけの、単純な話ではありません。

一番シンプルな事例は、
『海沿いなどの、いつも風が強い場所で、
 風当たりに弱い樹種を移植した』
という場合です。

しかし、この考え方には注意が必要です。
『何が風に強くて何か弱いのか』
というのは、そんなに単純な話では無いからです。

松類のようにもともとからして風に強い樹種や
ハナミズキのようにもともと弱い樹種というのは
ありますが、個体差も大きいと言えます。

ごくシンプルに言えば、
『風当たりのある環境で育った木は風当たりに強い』
ということです。逆もまた同じです。
これはその木全体だけの話ではなく、
部分部分によっても同じ話で、
『風当たりがもともと強い部位は風あたりに強く、
 あまり当たっていない部位は比較的弱い』
ということです。

何故そのようになるのかと言うと、
『「樹木(または部位)は、育った環境に適応していく』
からなのです。

逆に言えば、
『必要も無いのに、風当たりに強くするのはエネルギーの無駄』
だから、風当たりに弱くなるのです。


これは、風当たりだけではなく『日当たり』でも全く同じことが言えます。

常に日に当たっている部位はその環境に適応しているので、
日当たりに強く、
日にあまり当たっていない下枝などは、
強い日差しに弱い。


では、これらのことが障害とどのようなつながりがあるのでしょうか?

風や日で障害が起こるのは、
『「環境が変化したため」』に起こるのです。

それまで周囲を建物で囲まれていた老木が、
その周囲の建物が建て替えなどで取り壊された時、
いきなり風当たりが強くなり、風上側の葉が枯れる。

別な要因で梢端部の枝が枯れると、
いきなり下の枝に日が当たるようになり、
下の枝の樹皮の厚さが、強くなった日差しを
防ぎ切れず、組織が死んでしまい枯れる(幹焼け)。
するとそのまた下の枝に日が当たるようになり、
また枯れる・・・と次々と枯れ下がって行きます。


b)化学的な障害

葉は化学物質にも弱い組織です。
しかしながら、昨今は大気汚染などが原因で
樹木が枯れるというのは、日本ではちょっと考えられない状態です。

補足的に、化学的な障害を疑うのは、
どのような場合なのかを紹介しておきましょう。

まず、『化学物質は、風に乗って、一方向から流れてくる』
というのが基本です。
つまり、樹冠の一方がやられている場合には、
一応このパターンも考えてみる必要があります。
しかし、『風当たり』でも同じような症状になり、
そちらの方が圧倒的に可能性が高いことは留意しておくべきです。

それと、
『ある一定範囲の樹木には樹種に限らず同じような症状が現れる』
のが自然です。
一本の木だけでなく、周囲の木がどうなっているのかも
注意深く観察する必要があります。


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