G自分で自分を傷つける―進化の途中なのか


突然ですが・・・
『連理の○○』
という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
例えば『連理の松』とか。

これは違う個体の枝なり幹なりが癒合してしまったものです。
大体が『縁起が良い』とされて、
その地方の名物となっています。

でも、これは『組織レベル』で結合しているわけではないのです。
ケヤキ二股

次に、この写真はケヤキですが、 
ケヤキが成長して、その枝が太くなってくると、
この写真のようなスジが、二股のところに出てきます。

ケヤキなど、枝同士の角度が浅い樹種では、
成長と共に二股になっている枝のお互いの距離が近づき、
樹皮がくっついてしまいます。
しかし樹木はそれでも成長を続けますから
その部分は癒合していきます。
しかし、一度このような固い樹皮が出来てしまった組織同士は、ケヤキのウロ
決して結合しないのです。

ではどうなるのかというと、
樹皮同士がくっついた状態のままなのです。


この箇所を上から覗いた写真がこちらです。 
このように結合することが出来ずに、
腐れてウロになっています。



次に、こちらの写真を見て下さい。
根の上に、さらに根が被さっていて、
その根同士が完全にくっついてしまっているのが
わかると思います。
このような根は『ガードリングルート』というのですが、
植え桝が小さいときによく起こる現象です。
狭い植え桝の中で根が成長していくと、
根が行き場を失って、
根の周りをぐるぐる巻きにしてしまっています。
この現象はポットに植えている観葉植物が、
大きくなってしまったときにもよく見られる現象です。

このように根同士は完全にくっついて、
同化してしまっているように見えますが
実はケヤキの枝の場合と同じく、
全く同化していません。
同じ木の根っこ同士なのにです
この根同士はどちらも成長を続けるため、
お互いにお互いの首を絞め合います
非常にマズい状況です。


このように樹皮が材の中に内包されてしまうと、
既存の組織を傷つけ、バクテリアが発生したりして
病気になることがあります。
この場合、誰も悪くはありません。
『樹木自体の生まれつきの運命』のようなものです。
これから何億年か経てば、
もしかすると、
うまい具合に傷つかないように進化しているかも
しれませんね。



ところで一つ疑問があります。

よく大木の根をスライスした板が、
良いトコの玄関の衝立に使われているのを目にしますが、
そこで見る根同士は完全に組織が一体化しています。
樹皮が挟まっているようには見えません。
どうしてでしょうか?

どうも『木化(モッカ)』がキーになるようです。
樹皮は光に当たったり、乾燥したりすると木化していきます。
とくにその乾燥や暑さ寒さが厳しいときは
外樹皮(ガイジュヒ)(いわゆる樹皮)がより厚くなります。
逆にこの木化がしていない状態で、
組織同士がピッタリ接していて、
湿度が高い状況(つまりは土の中)であれば、
組織同士が一体化していきます。

ちなみに、
私はまだ試す機会が無いのですが、
ひげ根状になった不定根同士を
この原理を使って一本の太い根にするのも
可能だと思います。


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