Cどこまでが枝なのか?


枝とか幹とか言いますが、
ではどこまでが幹でどこからが枝なのでしょうか?

これは、道管・師管などの通道組織
(『その壱 E 道管・師管と木理について』を参照)
が、どのように材の中を走っているのかを観察すると
一目瞭然です。

樹木が日光不足の枝を落とす時などは、
この枝と幹の境目に分離層を作ります。
落葉時に葉と枝の境目に作られる『離層』と同じ意味合いがあります。
通道組織は、いわばストローを束ねたような造りになっているので、
そのまま枝を落としてしまうと、菌類が菌糸をいくらでも伸ばせてしまうからです。
この分離層には心材に蓄積される耐腐朽物質と同じように、
チロース』などのゴム状の物質や、
殺菌作用のある化学物質が道管などの空いた空間に充填されていきます。

枝の分離層の場合は、幹の内部に円錐状に食い込んでいる、
枝の組織』にこれらの物質が蓄えられ、
腐朽に抵抗しています。

ちなみに原木でシイタケ栽培をしたことのある方ならば、
この物質の強力さを実感していることでしょう。
シイタケの菌糸は、なかなか心材部に拡がれないのは
体験的に良くご存じのことでしょう。
 

さて、人間が行う『剪定』つまり枝を切る行為ですが、
上述のように、自然状態での落枝(ラクシ)を真似すれば、
樹木にとってのダメージが最少になることは
想像に難くないことと思います。

ここに幹や枝の通道組織の走り方を模式的に示します。

図1 剪定の位置        図2 通道組織の模式図

 これは剪定の位置と通道組織を模式的に表したものです。


 剪定の位置は図1で言えばどこが最も樹木にとって負担が少ないでしょうか。

それを考える上では図2で示した通道組織がどのように走っているのかを考えると興味深い。

 通道組織とは道管や師管などの水や養分を運ぶ管のことですが、図1からの間、
つまり枝瘤(シリュウまたはエダコブ)と呼ばれる部分は、組織的には『』に属しています。

 つまり、剪定の際にこの部分まで切り取るということは、『幹を傷つける』ということ、
つまり、『幹の道管や師管を途中で切ってしまう』ということを意味します。

 樹木は不必要な枝を自然に枯れ落とすシステムを採っていますが、
落とす部分はから先の部分です。

ですので、最も樹木に悪影響が少ない剪定位置はとなります。
剪定後の巻き込みが最も早いのもこの剪定位置です。

 ではではどうなのかといいますと、巻き込むときにまで巻き込む必要があり、
その分数年余計な時間がかかります。
切り口が数年余計に晒されることになりますので、あまり良いことではありません。



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