W.枝

A枝の伸長量とその意味

ここでは、枝の伸長量にはどんな意味があるのか解説していきます。
はじめにお断りいたしますが、徒長枝の伸長量は前歴に関係がほぼ無いのでここでは省きます。
つまり『通常の枝』での伸長量について述べさせていただきます。

まずはじめに、今年の枝の伸びは、今年の環境のせいでは『無い』ということを理解して頂きたい。
樹木全体はおろか、各部位の枝にも、
企業と同じく今年はいくらの設備投資を行い、どの程度増産するという戦略があるのです。

当然のことながら、不採算部門はリストラします。
つまり、実入りが良さそうな部分は、さらに黒字を増やそうとします。
そのため、前年、前々年・・・とエネルギー収支が黒字の枝は、
芽を作る段階で既に大きな芽を作り、枝をぐんぐん伸ばしていきます。
また、樹木は基本的にはどうも独立採算制を採用しているようです。

例えば、ここに2本の隣あった枝があるとして、片方は伸長が旺盛で、
もう一方は衰退してきているとします。

この場合、成長の良い(つまり黒字の)枝で生産した分を衰退しつつある枝に回せば
良さそうなのですが、そうはなりません。
衰退する枝はそもそも不採算部門のため、
リストラした方がその樹木にとっては利に適っているからでしょう。
木材構造学的に言っても、水を根から葉に運んでいる道管は根から葉(つまり下から上)
の一方通行で、葉で作った炭水化物を運ぶ師管は葉から根に向かっての一方通行のようです。

しかし、これらのシステムが非常に利に適っていることは、
『葉』『根』などの樹木の他の部位に関しても一貫して言えることです。
本当に樹木とは、人間と同じくらいに高度に進化した生物です。

枝は、葉や幹などと違い、年ごとの成長の度合いがそのまま目で見ることが出来ます。


写真@

頂端部や枝端部の各部位の枝の年ごとの伸長量を比較すると、
各枝ごとの5-6年の成長の過程を判別することが出来ます。
これにより、衰退木の衰退理由が判断出来ることが多いのです。


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