@枝の種類と働き

枝について考える時に、まずはじめに枝には2種類あることを説明しなければなりません。
それは、『通常の枝』徒長枝(トチョウシ)です。
別に通常の枝という呼び方があるわけではなく、
あくまでも『徒長枝ではない普通の枝』という意味でここではこの言葉を使っています。

 @)通常の枝

 徒長枝ではない枝。
  
樹木は周辺に他の樹木などがさえぎるものが無ければ基本的には、
 
360°放射状に枝を伸ばそうとします。
 
葉で光を受けるにはそれが一番効率的ですよね。
 
日立さんのコマーシャルで流れるモンキーポッドの木のようなイメージで良いかと思います。

 ちなみに樹木の健康度を考える際には、その樹木にとって一番良い周辺環境を
 
元に考える必要があります。
 
例えばこの枝で言えば、周辺に他の樹木などがさえぎるものが無く、
 
日当たりはその樹種にとって適正なほど満遍なく強く当たり、
 
風当たりはあまり無い、水分も排水も適切、などですね。
 
どうですか?贅沢な環境でしょう?

 実際にはそんな良い環境を得ている樹木は割合としては少ないのですが、
 
樹木の健康を確保するということは、
 
いかにこの理想に環境を近づけるのかに全て掛かっているので重要なことなのです。

 本題に戻ります。
 
そのように大変に恵まれた環境であれば、
 
樹木は基本的には葉を木の天辺から下の方までつけたいものなのです。
(ヤシとかは?などのツッコミは却下)

 なぜならば、それが一番光合成をたくさん出来るからなのですね。
 
そして、計画的に、順々に枝を出し、放射状に綺麗に枝を伸ばしていく。
 
日陰になってしまい、光合成を確保出来なくなったものは順に枯らして落としてしまいます。

 枝の伸ばし方も樹種によって様々ですので、
 自然樹形の木は遠くから見ても樹種の判別が出来ます。

 
互生や対生の別、真横に伸ばしていくのか斜めに伸ばしていくのか
 
真横に伸ばしていくのかなどの違いはありますが
 
(例:互生で斜め→ケヤキ、対生で真横→ハナミズキ)、
 
『基本的には360°、満遍なく』が基本的は戦略のようです。

 毎年毎年枝を伸ばしていきますので、毎年の枝の伸び具合を比較すると、
 
その枝の成長の軌跡が判断可能です。
 
当年枝は緑色だったりしますのでとても分かり易いのですが、
 
昨年以前のものも判別は容易です。
 
『新しい枝ほど、色が薄い』これは、年々樹皮が厚くなることに起因しています。
 
また、各年の境目には節というか皺のようなものが見て取れます。

 写真@

 例えば2年前の枝から突然枝の伸びが少なくなっていたり、
 
細くなっていれば、その年あたりに何かあったことがわかります。
 また、部位による枝の伸び具合を観察することにより、
 
主に水環境がどうなっているのかが判断できます。
 
なんらかの理由で十分な水分が行き渡っていない部位の枝は伸びが弱くなります。

 
 A)徒長枝

 太い枝の枝折れや剪定により枝が失われた時に、
 
それまで眠っていた潜伏芽(センプクガ)が起こされて伸びた枝です。
 
これは、枝を失ったことにより減少すること必至の光合成量を確保するため、
 
樹木が進化の過程で手に入れたシステムです。
 
何年もかけて伸ばしてきた枝を補う必要から、
 
通常では一年に20cmしか延びないような部位においても1mや2mの枝を一気に伸ばします。
 
強剪定した付近から伸びる徒長枝は普通、何本も同じような場所から発生し、
 
上向きに伸びていることが特徴です。


写真A

 枝はその構造上、発生した年以降の年輪と強く繋がっています。
 
そのため徒長枝のように後年になって突然発芽した場合、
 
その元で繋がる幹や枝との力学的な結合力が弱く、
 強風などで簡単に枝折れしてしまう危険があります。

 以下に枝と幹との年輪がどのような関係になっているのかを模式的に示します。





 この図でもわかるかと思いますが、
 
年輪とは、年毎のその樹木の外周の積み重ねです(ただし外皮を除く)
 
通常の枝では幹の中心部分と構造的にしっかりと結合しており、
 
徒長枝では休眠芽が伸びる為、徒長し始めるまでは枝ではないので年輪のような構造は発達せず
 
(とはいえ最初にその芽が作られた当時の道管とは繋がってはいる)、
 
構造的には徒長し始めてから結合しています。


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