C土壌構造


土には構造があります。
表面に何も生えていない硬い土と、
畑の柔らかい土とでは、土の構造が違うのはなんとなくわかって頂けるかと思います。

専門的な表現で言うと、
大雑把ですが前者が『単粒構造(タンリュウコウゾウ)』(もしくは細粒構造)、
後者が『団粒構造(ダンリュウコウゾウ)』といいます。


表面に何も生えていない硬い土とは、
たとえば学校のグランドの土のようなイメージです。
グランドだと、子供が走り回って踏みつけるので、
土が硬いのも当たり前という感じがすると思いますが、
ちょうど、陶芸家が土をこねて器を作りますが、
そのこねられた土のような感じと言うと近いかなと思います。
割と粒の大きさのそろった土の粒子が、隙間なくくっついたような構造です。
ですので、水も空気も通りにくい。(単粒構造の模式図 参照)


それに比べて畑や森の土は、とても複雑な構造をしています。
まず単粒構造を構成しているとても小さな粒同士がくっつき、団子状になります。
その団子同士がまたくっつきあって、もっとおおきな団子になります。
その団子同士がまたくっつきあって・・・という風に重層的な構造をしているのが特徴です。
このような構造をしているので、その土の中は様々なサイズの空間があり、
水も空気も豊富に含むことが出来る、まるでスポンジのようなフカフカの土です。
団粒構造の模式図 参照)


硬い土より柔らかい土の方が良さそうなのは何となく納得できるかも知れませんが、
実際、どんな違いがあるのかを考えて見ましょう。

単粒構造の模式図を見ると、青色で塗った空間がこの土壌の空間の全てです。
土壌粒子同士が緊密にくっついているため、小さな空間しかありません。
そのため、酸素が不足しがちなため嫌気性の細菌が優勢で、
また、空間が全てつながっているために、
単一の微小生物が爆発的に増えやすく、
病原となる生物が発生するとすぐに広がってしまいます。


かたや団粒構造では、模式図のように
最小の粒が寄り集まった一番小さな塊の中の空間は酸素が少なく、
その空間は嫌気性の細菌が優勢ですが、
その他の空間は隙間だらけのため空気を多く含み、好気性の細菌が優勢となります。
また、微小生物たちにとってはこの空間はとても巨大な三次元空間なのです。
隣同士の空間は土壌粒子同士がほとんど接触していないので
微小な生物(細菌など)には移動が不可能です。

そのため病原となる生物は住んでいますが、
空間同士が隔絶しているため広がることが困難です。

嫌気性、好気性の細菌も近くに同居できますし、
捕食者と被捕食者も隣接した空間に生きています。
このように団粒構造の土では生物相がとても豊かになります。


では、どういう場合に単粒構造になりどういう場合に
団粒構造になるのでしょうか?


単粒構造になる原因として、樹木が生えている環境の場合で多いのは、
@ 人や車に踏まれてしまう
A 雨が直接当たる
というのが挙げられます。

@は学校のグランドをイメージすれば分かりやすいですよね。
車などで硬く踏み固められると、普通は何年、何十年たっても硬いままです。
樹木衰退の原因は、大半がこれです。

Aは、雨が地面に当たる衝撃というものはとても凄まじく、
たとえ団粒構造をしている土壌でも、雨がブチ当たるとその構造が破壊され、
最小単位の粒にバラバラにされてしまう。
雨がやんで水がひいたとき、その浮いた土が沈みますが、
そのときには土壌表面の構造は単粒構造の模式図に示したような構造に変わってしまっています。

ですので、地表を草やマルチで覆うことはとても大きな意味があるのです。


次に、どうすれば団粒構造になるのでしょうか?

ソバやウドンを打つには普通はつなぎが必要ですよね?
それと、もちろんソバ打ち職人が必要です。
土の場合も同じです。

つなぎになるのは、『有機酸(ユウキサン)』や『腐食酸(フショクサン)』と言われるもので、
有機酸は植物が土壌中の養分を吸収するために根から出すもので、
腐食酸は落葉が分解するときに発生するものです。
ミミズの糞も大事なつなぎの原料になっています。

そしてソバ打ち職人の名人といえばミミズです。
ミミズなどの土壌小動物が土を混ぜ、
穴を開け、
未分解の土壌中の有機物を消化して植物が使える形に戻しています。


最後に、団粒構造の模式図では描いていませんが、
団粒』を作る構成要素にはまだ分解されていない有機物
(腐りかけの根とか)も大事な構成要素です。

これらの有機物を微生物が分解しているのですが、
その分解のときに最初に好気性細菌が優勢に働きます。
しかし、一番小さな団粒の空間はとても小さいので
すぐに酸素を使いきってしまいます。
そのため結果的に酸素不足な環境になることから、
その小さな空間は嫌気性細菌しか生きられない空間になる
というわけです。


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