J根系の診断について
@)密度、形態―樹種による違い、酸素要求度


樹種によって樹形が違うのは当然ですが、
根の形(言うならば根形)も違います。

遠目で見ても、マツやケヤキは見分けられますよね?
それと同じように、根もその樹種特有の形があるのです。

庭に生えている雑草を抜いてみてもわかるように、
太い根がまっすぐに伸びたものもあれば、
ヒゲ根ばかりのものもあります。

実は樹木でも同じで、
太くまっすぐな根(直根チョッコンという)が
地中深くまで伸びているものや、
比較的細い根が草でいうヒゲ根状に伸びたもの
があります。

直根が伸びるような樹木は
深根性(シンコンセイ)』と呼ばれ、
その代表格はアカマツです。

逆に、直根が無く、根をあまり深く伸ばさない樹木は
浅根性(センコンセイ)』と呼ばれます。
その代表格はヒノキやサワラです。


では何故、このような違いがあるのでしょうか?

どうも、そもそも『なぜ直根なのか?』ということを
考えるのが良いかもしれません。
直根の利点は、
@ 根が深いので、樹体を支え易く、より樹高を稼ぎやすい
A 根が深いと、雨の降らない期間が長くても、水分不足になりにくい
といった点が挙げられると思います。

自然に生えているアカマツは、
乾燥にとても強く、樹高も高く、太く育ちます。
尾根筋などの特に乾燥のキツイところほど、
むしろかえって元気がよさそうに見えます。

一方、造林されたアカマツではそうはいきません。
幹もひょろひょろとしていて、全体に元気がありません。
これは、苗木を作る時に直根を切って、ひげ根にしているのが
一番の原因ではないかと思います。
一度、直根を切ってしまうと、二度と直根は生えてきません。
そのため庭に植えている松でも、
乾燥に強いはずの松が、
直根が無いために乾燥に弱くなってしまっています。

私見ですが、昨今の松枯れの遠因として、
『松の造林』があるのではないかと思っています。
つまり、造林されたマツは水不足で弱っているので、
弱っている木を森から排除するのが役目の
カミキリムシが寄ってくる。
尾根筋に生えている天然の松は、
周辺の松が全滅していても、案外しぶとく生きている
という光景をよく目にします。


さて、話は戻って、
アカマツが生えている場所は、尾根筋ですので、
乾燥している代わりに、
土中には空気がたくさん含まれています。
谷筋ですと逆に、水分が土中の間隙を埋め尽くしています。

そのため、アカマツは根の酸素不足を考える必要がないため、
逆に言えば、根の酸素要求度が高く、
アカマツの根は酸素不足に極端に弱くなっています。
そのため、庭に植えられた松ではしばしば、
この『根の酸素不足』に見舞われます。


サワラは谷筋に生える樹種ですので、
水には滅法強い。
水浸しのような環境でも比較的平気です。
サワラの場合は、根を浅く広げることによって、
根の窒息を防いでいるといえます。


以上を踏まえると、基本的には、
深根性のものは乾燥地に適合していて滞水によわく、
浅根性のものはその逆で、湿潤な土に適合している
という傾向がありますが、
全てがそうかというと違います。
良い例が、ヌマスギで、
その名の通り、水辺に生える木ですので、
滞水には滅法強いのですが、これは深根性です。
このヌマスギは、なんと気根という呼吸するための根を
地表に出しているので、根が窒息するということが
ありません。

湿潤な環境に適応している樹種は、
それぞれに工夫して、根の窒息に対応しているようです。


「樹木診断概論」のトップページに戻る