I不定根について


みなさんは『不定根』という根をご存知でしょうか?
そもそも『定根』とは何ぞや?

定根』は、種子の中にもともとある根の元になる組織(幼根)が
そのまま成長して根になったものです。
定根』以外の根は全て『不定根』(右写真参照)です。
ですので、いくら地中に張っている根でも『ひげ根』も『不定根』の一種です。


今回、ここで取り上げたいのは、もう少し特殊な『不定根』です。

ソメイヨシノの老木には『ウロ』(右写真参照)が出来ているものが多く見られます。
そのようなウロの中に、枯葉などが溜まりますが、
そこにそのソメイヨシノ自身が根を張っていることが大変よく見られます。
この根は幹から出ているので、言うまでもなく『不定根』(一番下の写真参照)です。

このようなソメイヨシノの老木が弱っているとき、
その『不定根』があまりにも元気なため、
その不定根』を『普通の根として』育て、
 現在の弱った根の替わりにしよう
という治療を施していることが、これもよく見られます。

しかし、私はこの『治療』に懐疑的です。

このような『治療』を行った後、数年経ったものを観察すると、
不定根』から栄養を吸収して活動している部位と、
既存の幹との成長の差がありすぎ、
ことによると、別な個体同士が癒合しているだけのようにも見えます。
まるで藤か何か、ツル性植物が巻きついているようにも見えます。
実際、挿し木と同じことですので、この表現はあまり遠くは無いと思います。
そうなると、『治療』ではなく、『後継者の育成』ですよね。
ならば、最初から『取り木』などでクローンを育成した方が、
元気な木になることでしょう。

このように成長した『不定根』が幹の重要な役割である、
樹体を支える』という機能をどれだけ果たせるのか?
それが一番の疑問です。
もし、既存の幹が全て枯死してしまい、
不定根』で成長した部位だけになったとき、
その樹木は立っていられるのでしょうか・・・


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