②根元周りの環境
ⅰ）排水―根へのダメージ、水収支
周辺環境を観察するときには、根元の周辺をよく観察することも大切です。
根元周りを観察するだけでいろいろなことがわかりますが、
ここでは『排水』について書かせていただきます。
地形が斜面になっている場合は、排水の問題は起きにくいですが、
家の庭などでは、平らな地形が多いですよね。
そういった場所では、根元の周辺の地面に、
水溜りや水溜りの跡がないかを観察してみてください。
もし水溜りがあるようでしたら、
『
ここで質問です。
Ｑ：なぜ滞水が問題になるのでしょうか？
植物にはそもそも水が必要じゃなかったっけ？
・・・正解は、根が窒息するからです。
しかし、根が窒息すると聞いてもいまいちピンとこないかもしれません。
そもそも根は地面の中にあるから、呼吸出来ないような気もするし・・・
という疑問も浮かんできます。
ハイ。『根も呼吸している』のです。
根の細胞も生きている限りは、『
する必要があるので、酸素が必要なんですね。
もちろん枝や葉のように、
大気にさらされている部位よりは酸素不足の環境に強いはずですが。
ただし、根の酸素要求度は樹種によって全く違います。
もともと山頂付近などの、土壌がふかふかして酸素がたっぷりあるところに生えるような樹種
（例えばアカマツなど）は、根の酸素要求度が非常に高い。
逆に水際（ヌマスギ、フジ、ヤナギ類など）や、
っとすごいのならマングローブのような水中に生えるようなものは、
酸素不足を補う方法をその進化の過程で獲得しているため、
滞水していても全く問題にならないものもあります。
フジなどはむしろ滞水させる位に水をふんだんに与える環境の方が良いらしい。
ところで、滞水すると、なぜ『呼吸』出来ないのでしょうか？
・・・そこに水があるからだ！
というのはわかると思いますが、
本当に問題なのは、滞水しているということは、
水が下に抜けていないということが一番の問題なのです。
先ほども書きましたが、土壌の中は酸素が極端に少ない環境です。
これは、土壌中の動物や菌類、植物の根などが呼吸をすることによって
酸素を吸収し、二酸化炭素を大量に出しているからです。
しかし、土壌も息をしているのです。
畑の土を思い浮かべてください。
空気をたくさん含んだふかふかなその土に、雨がたくさん降ったとしましょう。
どうなりますか？
・・・水浸しになります。
水浸しになる、ということは、今までは土壌中の空間は空気を含んでいたが、
その空気の空間が、水の空間に置き換わるということです。
つまり、水が空気を大気中に追い出すというわけです。
これが、人間に例えるなら、息を吐いた状態です。
そして、晴れます。
水が地下水になって流れていきます。
すると、いままで水浸しだった空間に、
大気が入り込んできます。
これが、人間に例えるなら、息を吸った状態といえます。
このように土壌も大きな呼吸をして、フレッシュな空気をすいこんでいるのですね。
ところが、滞水を起こしている状態だとどうなるのか？
・・・もうお分かりですね。
いつまでたっても新鮮な空気に触れられないので、
根が痛んでしまうのですね。
根が傷むということは、人間で言えば、強烈な下痢になっていることと同じです。
強烈な下痢の時には、何を食べても飲んでも吸収はできません。
もしそれがずっと続くと栄養失調で死んでしまうでしょう。
樹木なら、水を十分に吸収できない→光合成がうまく出来ない→栄養失調
昨今、老木に限らず樹木たちがとてもとても弱っていますが、
大抵の原因は、この根が傷んでいるということが原因です。
そして、その根が傷む原因は、滞水などの土壌中の空気不足、それと根切りであり、
その原因のほとんどは、根元の踏み固め（踏圧トウアツ）や、地表の舗装、建築であり、
つまりは車や駐車場や道路や家の建て替えです。
樹木が弱っていると、枝葉幹と上ばかりを眺めてしまいますが、
実際にはその足元が原因であることがほとんどです。