Gアテ材について


アテ材とは木材の用語ですが、樹木医学においても重要な知識です。

アテ材とは、幹や枝で特に物理的負担がかかる部位に、
そこを物理的に強化するために形成されるものです。

アテ材には引張アテと圧縮アテがありますが、
それぞれ引っ張りに対抗するために形成されるアテ
圧縮に対抗するために形成されるアテ
です。


幹が傾いている木の場合、
広葉樹では引っ張られている側、
針葉樹ではつぶされている側にアテ材が形成されます。

根も広葉樹では傾いている方向と逆側に支持根が形成され、
針葉樹では圧縮される倒れている方向に支持根が形成されます。
(支持根→U.根系  @根の働き B)体を支える


大学では
広葉樹では引張アテ、針葉樹では圧縮アテが形成される
と習いました。
確かに幹のアテ材形成ではその通りだとおもうのですが・・・

写真で見ていただくとわかるとおり、
サクラなど広葉樹の太枝にできるアテ材は枝の下部にできます。
つまり圧縮アテですよね。
私の経験の範囲内では、枝においてはどうも全て圧縮アテのように思われます。
引張アテを思わせるものは見たことがありません。


ちなみにアテ材はどのように引っ張りや圧縮と対抗しているのか?

樹体を形成する二大成分にセルロースとリグニンがありますが、       
(その壱 D樹木と草の違いはなんでしょうか?参照)
引張アテでは引っ張りに強いセルロースが
圧縮アテでは圧縮に強いリグニンが蓄積されています。

また、アテを形成する部分は非常に肥大成長が盛んで、
断面積を大きくすることによって物理的に強くしているようです。


それに関連して余談ですが、
よく、

幹は日が良く当たる南側のほうが成長が良いから太くなる

というもっともらしい話が信じられています。
しかし、これは真っ赤な嘘です。

どうもこの説が出てきた原因は次のようです。

林業の現場は基本的には人工林であり、
人工林は少なくとも当時はスギ、マツ、ヒノキという針葉樹の林であった。
その林は山地にあるため当然、傾斜地に生えている。
それらの針葉樹は谷間に向かって少し傾くのが普通である。
これは冬の降雪によって幼木の頃より
根元から傾斜のしたに向かって曲げられることによる。



幹が傾斜した針葉樹は、その傾いた側にアテ材を形成する。
アテ材が形成されるということはそちら側の幹が太くなることを意味する。


そのように太くなった幹の切り口を見て、
谷間の方向は開けていて、日当たりがいいから、そちらが太くなったのだ
と勘違いしてしまった。
そのため、
日当たりがいいから、そちらが太くなる
ということが信じられるようになった。

ということらしいですね。


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