H 葉の虫害

葉は、樹木の体の中では一番攻撃されやすい部分です。
構造が弱く、栄養が豊富ですから。
樹木の方も、攻撃されるのを見越していますので、
少しくらい葉を攻撃されても痛くも痒くもありません。
葉の虫害は、よほどのことでない限り、
樹木を枯らすことは稀です。

そして、
その弱そうに見える葉も、実はなかなかに曲者なのです。

植物には基本的に毒があります。
野菜を例に挙げると、
『夏野菜は体を冷やす』
という話を聞いた事があるでしょう。
これはつまり、『どんな野菜にも薬効成分がある』ということです。
そして、『薬』と『毒』は紙一重なのです。
薬も量が多ければ毒となり、
毒も少量で症状に適していれば薬となるのです。

何が言いたいのか?というと、

虫は体がとても小さい、ということは、
大抵の植物は『毒』になるのですね。
そもそも植物は、虫や病原菌から身を守るために
そういう化学物質を作っているわけですから、
当たり前のことです。

当たり前のことなのですが、
人間は自分の体のサイズが大きいので、
実感として分かり難い。
しかし、これはとても重要なことです。


ここで一つ疑問が出るかも知れません。
キャベツ畑に行けば青虫がウヨウヨいますし、
ソメイヨシノの下にいればアメリカシロヒトリが落ちてきます。
これは、ある種類の植物(例えばキャベツ)を食べても大丈夫な虫は、
限られている(この場合モンシロチョウの幼虫)ということです。
彼らはキャベツが好きというより、
キャベツしか食べられないのです。

このように、大半の虫(病原菌も)は、取り付ける植物が決まっています。
そして大量に発生すると、樹木が丸裸にされてしまうこともあります。
先ほど、『葉の虫害は、よほどのことでない限り、樹木を枯らすことは稀です。』と
書きましたが、このような大量発生が毎年毎年続くと、
樹勢が落ちて枯死してしまうこともあります。

『多犯性』といって、いろいろなものに取り付けるものもいますが、
彼らからは大した被害は受けません。


次に、葉につく虫にはどんなタイプがあるのか?
という話。
ちなみに樹木医学では彼らは『害虫』ですので(樹木目線ですから)、
全てに『○○害虫』という名前がついています。

@吸収性害虫 (キュウシュウセイガイチュウ)

吸汁性害虫(キュウジュウセイガイチュウ)ともいいますが、
その名の通り、葉の汁を吸うタイプです。
代表的なのがアブラムシ類、カイガラムシ類、ハダニ類などです。
彼らの出すフンに菌が繁殖して、葉の裏が黒くなることが多い。
葉の裏にいることが多いので、
殺虫の際は葉の裏にしっかり撒いてやることが大切です。


A 食葉性害虫(ショクヨウセイガイチュウ)

これはそのまま、葉を食べてしまうタイプです。
代表的なのはヨトウムシやチャドクガなどの芋虫、毛虫の類ですね。
他にもコガネムシ類などの甲虫類などもいます。


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