⑥枝張りの理想型


樹木の活性という視点において、
枝の張り方にも良し悪しがあります。

図1に枝張りの理想型を示します。
理想的な枝張りを一言で表現すると、
いかに効率的に枝を伸ばし、葉をつけているか』                  
ということになります。

横から見た時は枝は図1-aのように、
上から見た時には図1-bのように放射状に枝が伸び、
その枝に葉がつく、
というのが理想型です。
これがいわゆる『自然樹型』と言われるものです。              
                                     
では理想型から外れたもの(図2)には
どんな問題があるのでしょうか?

枝では光合成が出来ないので、
 余計な枝がある分だけ余計にエネルギーを必要になる。

余計な枝は日光や風を遮ります。
 日光が遮られれば、
陰となった葉の光合成量が落ちてしまいます。
 風通しが悪くなれば、
病原菌や害虫が繁殖しやすくなります。

図2-aに図示したような『立ち枝(タチエダ)』、
下がり枝(サガリエダ)』、
胴ぶき(ドウブキ)』などは取り除く必要があります。
図1-aと比べてみて下さい。
樹木は開いた空間にどうにか葉を茂らせて光合成をしようとしますが、
図2-aのピンク色で表したような枝張りになっているなら、
図1-aのような枝張りになるように導く必要があります。

図2-bC’から伸びれいる、のような枝は
図1-bのAやのような枝になるように
誘導できると、樹木の活性上は理想的です。

つまり、図1-a図1-bのように、
最短距離で枝を伸ばした状態』が理想的で、
図2-bのような『回りくどい枝』は
なるべく作らないということです。


ところで街中では、
枝先を切って形を整える』という剪定がよく見られます。
というよりそれが一般的な剪定となっているようです。

ツツジ類や生垣などは、このようにして形を作るのは、
その用途の上からも必然的なことです。

しかし、もっと大きな木(たとえば桜など)でも、
このように枝先の剪定のみをしている例が
余りにも多く見られます。
このような剪定の模式図を図3に示します。

こういった剪定では、日光が樹冠の表面で遮られるため、
葉の量も相対的に少なくしかつかられず、
風通しも悪いため、虫や病気が発生しやすくなります。
また、すぐに枝が伸びて樹形が乱れるので、
結果的に剪定の費用も余計にかかります。
図1のような理想系を目指すならば、
枝は元から落とす必要があります。

切断面の保護や、剪定後に伸びてくる徒長枝の整理などが必要ですが、
樹木の活性も高まり、後の管理もラクで費用も少なくて済むようになります。



 

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