D枝密度

ここでは樹木にとって、健全な枝密度とはどういうものか?
を考えていきたいと思います。


@)枝密度が高すぎる場合

枝先を剪定すると、次の年にはその切った先から徒長枝が複数伸びていきます。
枝を落とされたということは、
その樹木にとっての『緊急事態』です。
それだけ光合成量が減るということですので、
新しい枝葉を直ぐにつけたいようです。
また、
その枝が生えていた『空間』を自分の枝で埋めなければ、
周りのライバル(樹木たち)にその空間を奪われてしまいます。
そのため長い枝(徒長枝)を一気に伸ばします。

このように枝を切った切り口付近から長い枝をたくさん出す、
ということは、
その元の切り口から先の枝密度が高くなる
ということになります。(右写真参照)


お庭や公園などの樹木は毎年剪定されることが多いですが、
その剪定のたびに枝の数が増えていき、
その結果、枝がとても混んでしまいます。
丸く作ったツツジなどは、むしろこれを狙っていますが。
(ツツジの写真)

このようにして枝が混むと、
@下の方にとどく光が極端に少なくなる。
 そのため、下の方についていた葉や枝がなくなってしまう。
A病気や害虫が出やすくなる。
という問題が出てきます。


もう一つ、『枝先だけ枝密度が高くなる』事例があります。

上に伸びる成長力が落ちる』と枝先に枝が固まってつくようになります。
(成長の悪くなったケヤキの写真 準備中)
枝先の枝葉の密度が高く、それよりも根元の方はスカスカしています。
この写真では、枝先に葉が固まってついているのが分かるかと思います。
今年延びた枝(当年枝(トウネンシ))に葉がつくのは当たり前ですが、
伸びてから二年目、三年目・・・となるごとに、
その枝には葉はつかなくなっていきます。
つまり写真で見えている枝先についている枝葉の塊は、
ここ数年、これだけしか枝が伸びられなかったことを物語っています。

この場合、どんな問題が起きるのか?というと・・・
というより、このような状況になっているのが問題です。
これは上述のように『伸長成長が悪くなっている』ために
起こっていることですので、
つまりは樹勢が悪いということなのです。
樹勢回復処置が必要です。


@)枝密度が低すぎる場合

上述の『枝先だけ枝密度が高くなる』場合も、
樹木全体としてみれば、枝密度が低すぎる一例ですが、
他にもいくつかパターンがあります。
この『枝先だけ枝密度が高くなる』状態よりも更に樹勢が悪化した場合、
頂端部の枝ごと枯れてしまいます。
上の枝が枯れると、特に弱った古木では多いパターンですが、
その枯れた枝の下の枝が枯れ、またその下の枝が枯れ・・・
と、連鎖的に枯れが下の方に向かって進むことがあります。

これは、上を覆っていた枝が枯れると、
その下の枝に直射日光が当るようになり、
その部分が『幹焼け』を起こす。
ただでさえ樹勢が落ちているので、
そのダメージに耐え切れなくなり、その枝が枯れる。
そしてその下の枝に直射日光が当り・・・と、
これが連鎖的に起きます。

根本的な樹勢回復処置も当然必要ですが、
最初に頂端部の大枝が枯れた時に、
その下の枝に『幹巻き』をしてやる必要があります。


もっとも良い枝密度とは、
十分に高い密度の枝があり、
その樹木が必要な光合成量以上の葉がつき、
かといって混みすぎていない
というものです。

人為的にこれを実現する為には、
樹木の活性を高めると共に、
次項(E枝張りの理想形)に説明するように、
バランスの良い枝張り』を心がけることが大切です。

私は、『土壌の管理』と、この『バランスの良い枝張り』を心がけることが、
樹木治療の根本だと感じています。



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