E腐朽菌


樹幹を痛める病原菌は、
その菌の拡がり方から、いくつかのタイプに分けられます。
幹の中心部(心材部)を腐朽させるタイプを『心材腐朽菌』、
今活発に活動している、幹周辺部(辺材部)を『辺材腐朽菌』、
そのほかにも、樹皮などのごく表面につく
膏薬病』や『ヒノキ漏脂病』のようなものもあります。

また、それらの菌の侵入方法は大きく分けて二つあります。
折れたり切ったりした枝の切り口から侵入するものと、
根の切断部や腐朽部から侵入するものです。

シイタケ栽培をしたことのある方ならご存知でしょうが、
シイタケ菌というのは、心材にはなかなか菌糸をひろげられないものです。
つまり彼らは『辺材腐朽菌』なのですね。

心材部はそもそも菌などに侵入されないために、
さまざまな防腐物質やゴム状の物質を蓄積している場所ですが、
やはりそこを狙う菌も現れてくるわけです。
ライバルが少ないせいでしょうか。
それら『心材腐朽菌』といえば、『サルノコシカケ』でしょう。
この『コシカケ類』は漢方で有名なキノコたちです。
彼らが樹木から出ていれば、
根株心材腐朽』であると診て間違いありません。
彼らは根から侵入して心材に拡がります。
つまり彼らが出ている樹木は、
根に何か問題が起きている
ということになります。

キノコの余談ですが、
彼らの『本体』はコシカケなら樹木の中に拡がっている菌糸です。
キノコは植物で言えば『』つまり『生殖器』です。
ですので、発生したキノコをいくら除去しても、治療の上では
何の意味もありません


これら腐朽菌の拡がり方ですが、
幹で言うと、垂直方向には驚くほど早く拡がり、
鉛直方向にはなかなか拡がりません。(右の図参照)

これもシイタケ栽培をしたことがあれば
よくご存知かも知れませんね。
これは、菌糸が拡がるとき、
通導組織を利用するからなのです。
例えば道管はほとんどストローと同じような構造ですので、
菌糸はいくらでも簡単に伸びることができます。
しかし鉛直方向にはそういった組織は無いので
拡がるのも大変なのでしょう。


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