B樹皮


樹皮の診断をするには、
まずは、樹皮の役割を理解しておく必要があります。

樹皮の役割としては大きく分けて3つあるのではないかと思います 。

a)  外敵の侵入を防ぐこと
b)  乾燥を防ぐこと
c)  温度変化を和らげること

樹木の健康度を判断するには特に、
b) c)が重要な要素になります。


b) 乾燥を防ぐこと

日本においては、大気の湿度は総じて高いため、
マツ類やアベマキなどの例外はありますが、
乾燥を防ぐために樹皮を発達させているものは
少ないように思います。
地中海沿岸に生きているような樹種、
オリーブやコルクガシなどは樹皮がとても分厚く発達させていますが、
これは大気の乾燥から身を守るためです。
ちなみにコルクはこのコルクガシが特に発達させている
コルク層」を加工して作られています。
日本においてはこのコルク層をよく発達させているのは
アベマキやキハダなどです。


c)  温度変化を和らげること

温度変化」としたのは、
暑くても」「寒くても
樹皮を発達させる方向に作用しているからです。

例えば、同じ樹種でも本州のものと北海道に生えているものでは、
樹皮の発達が全く違います。
もちろん北海道の方が分厚い樹皮を持っています。
また、樹皮に直接太陽があたるような環境に育つと
樹皮を厚く発達させます。
これは、b) のことともつながるのですが、
寒冷地は湿度も低いため乾燥していますし、
陽が当たる、ということもその部分の乾燥を進めます。
つまりどちらにせよ樹木としては樹皮を発達させたがる
ということです。

造園の世界では、「幹巻き」というものがあります。
幹の周りに麻布などをぐるぐると巻きつけるものです。

最近ではこの幹巻きも、幹の難点(切りすぎたとか傷があるとか)
を隠すためにしているきらいがありますが、
本来の意味は、「幹焼け」を防ぐために行われる作業です。

幹焼け」とは幹が焼けることで、
それまで直射日光に当たっていなかった部分に
いきなり陽があたるようになると、
その部分の樹皮が薄いため、樹皮の下の組織が死んでしまう現象です。

逆に言えば、
樹木は環境に合わせて
樹皮の厚さを適正に発達させているということです。
不必要に厚くしたりもしていないということです。


これらを踏まえて、樹木の活性度を診断する際、
この樹齢の樹種が、この環境にあって、この樹皮の厚さで適正か?
ということが判断基準となります。
活性が低いと、いくら樹皮を発達させたくても、
なんとか生きていくことに精いっぱいで、
そんな余裕はないのです。


基本的には、
同じ樹種ならば、より樹皮が発達しているもの方が元気
ということが言えます。

しかも、その厚みになるには、十年単位の年月が必要であるため、
その10年20年30年の間の成長具合を判断する指標となります。

また、色つやがきれいなものほど元気です。
試しにお近くの松の樹皮をいろいろ見比べてみてください。
ものによって色つやも厚さも違うことがわかるでしょう。


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