F深植え・覆土


深植え」とは、植栽のときに深めに植えることで、
覆土」とは、生えている樹木の根元に土をかぶせることです。

どちらも見た目は似ていて、
根張り」が無く、
まるで電柱のように、柱を地面に突き立てたようになっています。

本来、樹木には必ず根張りがあります。
ちなみにこの幹から張り出した部分が根張りと言われるもので、
木材組織学的には幹ではなく「」になります。


a)深植えの功罪

さて、まずは深植えについてお話します。

樹木を植える場合、
もともとの深さよりも浅めに植えられたものを「浅植え」、
深めに植えられたものを「深植え」といいます。
樹木医学の世界では、基本的には浅植えをお勧めしています。
理由としては、これまでにも解説していることですが、
根(特に栄養吸収根→リンク)にとって、酸素不足は深刻な問題だからです。
ですので、基本的には浅植えを心がけて下さい。

しかし日本で基本的に浅植えが良いのは
降水量が多いのが大きな原因でしょう。
また、もともと水辺に生きているような水を非常に好む樹種や、
藤などの水を非常に好む樹種においては、
むしろ水が流れてきやすいようにした方がいい場合があります。
彼らは滞水しているような場所でも根が腐らないように
進化しているようです。


b)覆土について

覆土をわざわざするメリットは、まず何もないと言って良いでしょう。
デメリットは、深植えでも書いたように根が酸素不足になるということです。

しかしこの覆土はしばしば見かけます。
樹木が老齢である場合、
当たり前のことですが、同じ場所に百年とか二百年とかそれ以上とか生きています。
しかし、人の営みはそんなに長い期間ではないので、
人間の都合は良く変わります。
例えば、お庭に土を入れたい、とか、
家の周りを整備する時に、斜面を水平にしたいとか、
グランドに土を入れたい、とか・・・

その土の厚さが例え5センチでも樹木にとっては大変なことです。
寝ているときに顔に濡れタオルを被せられるようなものです。

樹齢が若いときはまだそれに対応できるのですが、
老齢になってからではなかなかそうもいきません。

ですので、みなさん、
根元に土を被せるのはやめてあげて下さい。


「樹木診断概論」トップページに戻る