C周辺の植生―微気象(ビキショウ)的な影響



多くの森では、大木の下には小さな木や草が生えています。
大きな木の下に生えているので、人々にはあまり関心を抱かれません。

しかしながら、彼らの役割は”非常に”大きい。
大きな役割でも、二点挙げられます。


1) 土壌の流亡を防いでいる。

これは、傾斜地での場合ですが、
下草がない場合では、雨が地面を直接たたきます。
そうすると土壌構造が壊され、細かい粒子になった土が
下草などの障害物のない地表を流れていきます。
障害物がないので流速も速く、地面も深くえぐれてしまいます。
当然、地表にあった枯葉などの有機物も流されますので、
そこにいた数々の小動物(ミミズなど)も生きてはいけません。
そして流れ去った後の地表は、素焼きの焼き物のように硬くなってしまいます。

地表面の有機物は、天然のマルチングです。
マルチされていると、その下の地表面はいつも湿気を保つことが出来、
直射日光も当たらないので、温度の急激な上昇や下降にもされされません。
土壌動物によって土が耕されますので、いいことずくめです。
地表に下草がないと、これが失われてしまうわけです。


2) 空中温度、湿度が安定しやすい。

上記のマルチングと同じように、地表を下草が覆っていると
その下草自身がマルチのような役割を果たします。
彼らが生えていることにより、地表付近の湿度が高く、
温度の急激な上昇や下降にもされされません。
彼らの作る葉の下の小さな空間が大気との間に緩衝帯を作っている
というイメージでしょう。
さらに、彼ら下草の出す水蒸気が樹冠(ジュカン)(木の葉のある部位)の下の、
いわゆる『森の空気』の空中湿度を高め、上に生えいている大木が
余計に乾燥するのを防いでいます。


このように自然状態の森では林床(リンショウ)(林の地表面のこと)にある程度の光が差し込み、
下草や中木、低木が生えています。
それらによってその上に生えている大木も元気でいられるのですね。


樹木を診断する際には、自然(森の)状態に比べてどうなのか?
という視点がいつも大切です。
その下草によって、
地面への直射日光が防がれているとか
雨が直接当たらないので土が軟らかい
などの
影響の具合を見ていきます。


また、庭木などの場合には、下草の悪影響も考える必要があります。

下草は大木に比べ、地表に近いところに根を張ります。
ということは、肥料などをやる際に、
上からばら撒くやり方だと、先に下草が栄養を吸収してしまいます。
さほど大きな衰退原因にはならないように感じますが、
衰退の原因を探り出すためには、
肥料のやり方などの管理方法も聴取することが大切です。


「樹木診断概論」に戻る