C『栄養』とか『養分』とか言いますが・・・
『栄養』とか『養分』とか言いますが、
私たちが何気なく使う、
『栄養の豊富な食べ物』
とか、
『栄養の豊かな土』
などの言葉には注意が必要です。
なぜなら、動物と植物にとっての『栄養』や『養分』は
『全く根本的に違う』からです。
言うまでもありませんが、
動物にとっての栄養は『有機物』で、
植物にとっての栄養は『無機物』です。
動物にとっても多少の無機物は必要ですが、
大量に必要なのは、炭水化物、タンパク質、脂質などの有機物です。
これらの有機物は高分子つまり、分子の大きさがとても大きいので、
『消化』つまり細かく分解しないと細胞膜を通過できません。
つまり『栄養』を吸収できないのです。
しかし、動物には消化器があり、消化・吸収をおこなっています。
それに比べて植物はどうでしょうか?
植物には消化器のようなものは無く(植物プランクトンは除く)、
従って高分子である有機物は吸収できません。
また、そもそも彼らにとって必要なのは、
光合成に必要な、『無機物』なのです。
以上が基本的なところですが、
ここで一つ疑問が生まれます。
栄養が豊かな畑の土は、
たくさんの堆肥(有機物)を混ぜ込むことによって生まれます。
有機農法が良い例ですね。
しかし、植物にとって必要な栄養が『無機物』ならば、
なぜ、そんなに堆肥などの『有機物』が必要なんでしょうか?
有機農法の意味合いは単純ではないのですが、
主な意味合いを一言で言えば、『土壌特性の改善』でしょうか。
後の項(U.根系 C土壌構造)でも詳しく説明しますが 、
簡単に説明すると、土を良くするのは、植物と土壌動物の共演なのです。
植物や動物が死ぬと動物や細菌などの力で細かく分解されます。
特に植物の根は、落葉する葉と同じくらいの量が毎年枯れています。
それらの細かい遺体と土壌の細かい粒子とを
『有機酸』や『腐食酸』が糊づけして大きな団子状の粒にしています。
このような構造を団粒構造といいます。
このような構造を持った土は、
フカフカで栄養(無機物)もたっぷりと含み、
その栄養がゆっくりと長く効きます。
そのような土で育つと樹木はとても元気に成長できます。
また、山の頂上付近など、土壌水分が常に少ない場所では、
土の上に乗っている枯れ葉の層が
樹木にとっての重要な栄養源となっています。
水分の少ない場所では、枯れ葉などの有機物の分解がとてもゆっくりであるため、
分厚い分解されていない枯れ葉の層が堆積します。
山の頂上付近などは土壌の厚さも薄く、
土壌中の栄養もとても少ないのが普通です。
そんな場所では、この枯れ葉の層(落葉層)が
その都度、土壌の小動物(ミミズなど)に分解され、
そこで出来た無機物で植物が成長しています。
これらのような意味においては、
樹木にとっても土壌中の有機物はとても大きな役割を果たしています。