桜の古木
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桜の寿命は短い…

いま桜の花を愛でる酔客が、全国に溢れかえっています。
その桜の代名詞とも言えるソメイヨシノの寿命が
短いことはよく知られています。
その寿命は80年、いや100年は生きる、
などと言われています。
しかし、それにしても短い。
『ソメイヨシノは例えばヤマザクラなどと比べ、
毎年つける花の量が多いため、
寿命が短いのかな…』
それが私がヨシノの無い北海道から出てきて、
あの凄まじい花のつき方をするヨシノを見ての感想でした。
しかし、他の種類の桜の寿命はそんなに短くないのです。
例えば、全国各地で桜の古木・大木、といえば、
『エドヒガン』ですが、
彼らは軽く400年以上は生きているようです.

桜のように陽樹といわれるものたちは、
陰樹よりも寿命は短いものですが、
それでも400年や500年は生きるものです。
ソメイヨシノの寿命が短いのは、どうも、
拒絶反応にあるように思われます。
エドヒガンやヤマザクラなどは、
桜の種類であって、園芸品種ではありません。
つまり、種から生まれ、育っているのです。
しかし、ソメイヨシノは接ぎ木で殖やされます。
台木として、オオシマザクラやヤマザクラの実生苗を使います。
人間ならば、たとえば心臓を移植した場合、
必ず拒絶反応が起きます。
動物の場合、体内に異物が入ってきたときには、
それを排除する反応が素早く出ます。
しかし、植物の場合は、頻繁に接ぎ木がされているのを
見てもわかるように、そのような激しい反応は見られません。
とは言え、種類のより遠いものと(例えば科が違うなど)
接ぎ木されてば、結合しません。
近縁であるほど、接ぎ木の成功率が高いことが知られています。
(これを接ぎ木親和力が高いという)
ということは、植物にも拒絶反応があるのです。
逆に言えば、いくら接ぎ木親和力が高い場合でも、
やはり拒絶反応は有る、ということが言えます。
ソメイヨシノは全てクローンです。
つまり、何千、何万と植えられているソメイヨシノはすべて、
ひとつの個体と言うことも出来ます。
そして彼らは人間による人工的な世代交代、
つまり接ぎ木でしか子孫を残せません。
(子孫ではなく、ひとつの個体が生き続けているだけですが)
そのため、ある程度、老木になってくると、
台木との間で拒絶反応が出てくるのではないか。
と、私は思っています。
余談ですが、
では、空中取り木などで、
自分の根を出したソメイヨシノの寿命はどうなんだろうか?
というのが、私の年来の興味です。
誰か試してくれないかな・・・
このように、面白そうな研究のネタがイロイロあるのですが、
どこかの大学でぜひ実験して欲しいものです。
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